金木犀の夜

家を出ると、金木犀の匂いがした。雨が降った後のせいか、その匂いはいつもより強く感じられた。 私は誰かにそれを伝えたくて、コンビニに向かいながら電話をかける。2回目のコール音が鳴り終わる前に、電話が繋がる。「もしもし?」 「はい、どうしました?…

文鳥は夢を見る、、、翌日

目を覚ますと、私は鳴き声をあげていた。何かを言われたような気がするけど、思い出せない。狭い鳥かごから見える空を見上げて、私はここで生きていこうと思った。

文鳥は夢を見る

空を飛んでいる夢を見た。 阿呆がこちらを見上げて、何かを叫んでいる。 「文蔵!」 どうやらそれが私の名前のようだった。 私の名を呼び、どこまでも追いかけてくるその男は、鳥の巣のような頭をしていた。 その頭が見えなくなるまで、真っ直ぐ飛んだ。 高…

世界の終わり

誰であろうと一度くらい、世界の終わりについて考えたことがあるのではないだろうか。あのピエロがいるバンドのことではなく、文字通りの「世界の終わり」である。 毎年のように世界が滅ぶという予言を聞いている気がするけれど、みんな世界滅亡が大好きなの…

おとしものと夕暮れの櫛

ゆふぐれに櫛をひろへりゆふぐれの櫛はわたしにひろはれしのみ 『なよたけ拾遺』永井陽子 池袋駅の目の前にあるバス停の横で、櫛を拾った。見るからに安物のそれは、誰にも拾われることなく、ずっと前からそこに存在していたように思われた。 池袋の雑踏に紛…

おそうじとおとしもの

道を歩いていて、落し物を拾ったことが今まで一度もない。もしかしたら、忘れているだけで、拾ったことあるのかもしれないが、全く記憶にない。 だから、落し物を拾ってみたいという謎の欲望がある。落し物を拾うことで何かが起きそうな気がするのは、僕の考…

おひっこしとおそうじ

僕は掃除をするのが苦手だ。掃除をするのがというより、物を捨てるのが苦手なのだ。引っ越す際に、部屋にあるものを整理しようと努力はしてみたが、結局ほとんどの物を持ってきてしまった。 最近、「断捨離」とか「ミニマリズム」という言葉をよく聞く。正直…

はじまりとおひっこし

先日、引っ越しをした。5年ほど住んでいた街から離れ、電車で1時間くらいの距離の場所に引っ越すことになった。 ちょうど昨日、退去の立会いが終わって、長い間お世話になったこの街にも来る用事がなくなった。 名残惜しくて、1時間ほど最寄の駅の周辺をブラ…